研究概要 |
1.生体試料中のD-乳酸の蛍光定量法、D-乳酸をヒドラジン、D-乳酸脱水素酵素、ジアフォラーゼ、チオクタミドの存在下で反応させピルビン酸ヒドラゾンにする。これを4,5ジメトキシ-1,2-ジアミノベンゼンと塩酸中で反応させ6,7ジメトキシ-3-メチル2-ハイドロキシキノキサリンに変えた。生じたキノキサリンをクロロホルムで抽出して365nmで励起して432nmで定量した。検量線は100nmol/mlまで直線で、定量限界は2nmol/mlであった。前回報告したHPLC法では大量の試料を処理することが困難であったが、この方法でこの点を改善した。2.正常人における食事前後の血漿D-乳酸の経時変化。前日午後10時より絶食させて、8時30分朝食後、定時間隔で採血。血漿D-乳酸定量。含量の変化は、朝食15分後では朝食前に比べて40%減少した。しかし、90分後までに80〜120%に回復した。L-乳酸は、朝食後30分以内に朝食前に比べ30%の増加を示し、その後90〜120分まで減少を続けたのち再び増加し始めた。このL-乳酸の朝食後の経時変化はD-乳酸のそれとレンプロカルな関係であった。3.運動前後によるD-乳酸の変化。短時間激しい運動前に比べて運動後では、血漿D-乳酸は、2.5倍、ピルビン酸は2〜3倍上昇した。30分間マラソンでもほぼ同様の結果を得た。4.ストレプトゾトシンによる糖尿病ラットにおける経日変化。投与後4日目においては血糖の上昇(約2.3倍)がみられ、L-乳酸も上昇傾向がみられた。D-乳酸は有意な差はみられなかった。17日目では、血糖の上昇(約3.8倍)とともに血漿D-乳酸はコントロールに比べ約1.5倍上昇した。L-乳酸は逆に下降傾向がみられた。30日目では血漿D-乳酸はコントロールに比べ約2倍の上昇があたが、L-乳酸はコントロールに比べ約0.5倍の値になった。後期糖尿病においてはD-乳酸とL-乳酸では増加傾向が全く反対になった。
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