自然発症高血圧ラット(SHR)は、高血圧の発症以前に免疫機能の異常が出現する。武市らによれば、T細胞機能の低下が著明であることが報告されている。先に我々は、正常血漿中に存在し、T細胞を抑制的に調節するα-グロブリン(IRA)が、SHRの血漿中には欠損していることを明らかにした。この欠損蛋白はIRA蛋白(9個の亜群から成る)のうち数個であり、そのうち、免疫抑制活性の比較的強く亜群(IRA-II、及びIRA-V)について抗体を作成するためウイスターキョートラットIRAより、アフィニラィークロマト、ACA-34カラム、ゲル濾過、FPLCシステムを使用したMohopカラムによる等電点分画、およびHPLCによる逆相クロマトを行い目的の分画を学離、同定した。免疫抑制活性はConA応答及びNZB/W F_1マウスで出現する抗DNA抗体産生抑制を指標とした。上で得た分画は型のごとくBALB/Cマウス皮下に免疫源として与えミエローマ(SP_2/OAg株)と細胞融合(PEG1500使用)によりハイブリドーマを得その中からIgGタイプの安定株を選択した。抗体の精製は硫安分画、ProtenA-Sepharose4Bカラム、抗原-Sepharose4Bカラムによるアフィニテークロマトによった。ポリカーボン製プートを用いた。ILISA法を確立し、IRA-II及びIRA-Vが0.1ng/mlのオーダで定量出来ることを確認した。SHRの種々の週令のものを用い、血中IRA-II及びIRA-Vの定量を行ったところ、8週令頃よりIRA-Vにおいて特に濃度が減少していることが判明した。IRA-IIの変動はIRA-Vにくらべ軽度であった。30週令のものではIRA-I及びII共にほとんど検出来なかった。本蛋白の欠損がSHRの免疫異常の発症及び維持に如何なるかかわり合いを持つか不明であるが、今後さらにこの点について追究することは、血圧異常と免疫とのかかわり合いの解明にとって重要であると考える。
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