研究概要 |
イメージング, ミサイル療法の評価系を確立するために, 利用する腫瘍細胞の産生アルカリフォスファクーゼ(ALP)アイソザイムの種類と産生量を培養条件の差異により検討した. MKN-45, MCF-7, FL-cells, KB-Cells, SKGIIIa, Saos-2の6種類の癌細胞を用いた. MKN-45, MCF-7細胞は酪酸ナトリウムにより胎盤様ALPを産生するようになり, その誘導は4mMの酪酸ナトリウムで最大であった. MKN-45はNagao ALPを産生し, MCF-7はRegan ALPを産生することを明らかるした. SKGIIIa細胞はプレドニゾロンにより胎盤様ALPの発現が誘導されるが, 肝性ALP, 小腸性ALPも産生していた. Saos-2細胞は主に肝性ALPを産生しており, FL-cells, KB-cellsは胎盤様ALPと同時に, 特殊な小腸様ALPを産生し, この特殊な小腸様ALPはALPの進化の過程の原始的なALPであることが酸素化学的, 兎疫化学的な手段によって明らかになった. 次に培検材料を用いた睾丸腫瘍, 子宮頚部癌, 卵巣癌組織中の各ALPアイソザイムの検索と血夏レベルのALPアイソザイム量を経時的に測定した. その結果, Seminoma患者の血中へのALPの出現は低頻度であるが, 腫瘍組織中には多量(正常組織の10〜100倍)の胎盤様ALP存在した. また肝性ALP, 小腸性ALPも若干ではあるが上昇していることが明らかになった. この結果はイメージング, ミサイル療法において, ALPを標的酸素(蛋白質)とすることが, 従来の癌マーカーに比べ優位であるとの基礎的な知見であると考えられる. そこで胎盤性ALPに対して作裂したモノクローナル抗体(HPMS-1)が, 上記腫瘍組織から得られた胎盤様ALPと十分に反応するか否かについて検討した結果, イメージング, ミサイル療法に利用するために十分な反応性を有していることが示された. 現在, RicinAとHPMS-1との結合法としてマレイミド誘導体を用いる縮合法が, その目的に合致していることをつきとめ, 反応条件を詳細に検討中である.
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