研究概要 |
前年度において、全ての細胞(組織)には3種のアルカリフォスファターゼアイソザイム(ALP isozymes)が含まれていることを明らかにした。そこで今年度は、睾丸腫瘍患者の血清中ならびに手術材料中のALP isozymesの含量をMonoclonal immunocatalytical assays(MICAs)を用いて測定した。その結果、血中での脂盤様アルカリフォスファターゼ(PLAP-like)の半減期は約2日であり、腫瘍の摘出に伴いすみやかに消失することをつきとめた。また血中でのALP isozymesの増加が顕著でないseminoma患者においても、手術材料中の全くの腫瘍組織のPLAP-likeの含量は、正常組織に比べ10ー100倍程度の増加が認められた。また同時にtiss ue unspecificな酵素も同程度上昇していた。以上の結果は、睾丸腫瘍の診断、治療に際してMICAsによるALP isozymesの測定が有用な情報になりえることを示したものとして、臨時的に大きな意義があるものと考えられる。ALP isozymesの上昇は睾丸腫瘍の中でも、seminomaに特異的であり、他の腫瘍マーカー、HCG,α-fetoprotein、フェリチンとの組み合せによりyolk-sae,choriocarcinoma等の睾丸腫瘍とseminomaが生化学的に区別されることが明らかになった。また肉眼的に正常組織と判定された腫瘍周辺組織においても、ALP isozymesの含量を指標とした生化学的な変化はすでに進行していることが明らかになった。 つぎに、予備的な実験ではあるが、Dr.Stigbrand(スウェーデン,ウメオ大学、生理化学教室)のグループとの共同実験を通じて、卵巣癌のイメージングを行った。^<125>IをPLAPのmonoclonal antibodyに標識して、画像診断の目的に供した。その結果、明確な画像として卵巣癌のイメージングができることが明らかになった。
|