光化学治療に有効な光増感剤を開発する目的で、酵母細胞の致死活性および大腸菌プラスミドYRp7DNAの一本鎖切断活性を指標とした光増感物質のスクリーニング系を検討した。先に強力な光増感作用による酵母細胞致死活性や変異誘発活性の認められたユーフラビン、プロフラビン、アクリジンオレンジなどのアクリジン化合物に、強力なプラスミドDNA一本鎖切断活性が認められた。クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリンも10〜100μMの濃度でDNA鎖切断作用を示した。ヒトに光増感皮膚障害を引起す可能性が示唆された9種の医薬品アフロクアロン、エノキサシン、トリクロルメチアチド、ピンドロール、ジゴキシン、クロルメザノン、メチクラン、ピロキシカム、グルベンクラミドについても検討したところ、筋緊張性疾患治療薬のアフロクアロンと化学療法剤のエノキサシンにプラスミドDNA鎖切断活性が認められた。アフロクアロンについては光溶血活性も確認された。このようにプラスミドDNAの一本鎖切断を指標とした光増感物質のスクリーニングは感度も高く、操作も比較的簡単で短時間に多数の薬剤を検定できるなど種々の利点を持っている。ユーフラビンの光増感によるDNA鎖切断活性はNaN_3などの一重項酸素消去剤で著しく阻害される。一方クロルテトラサイクリン、プロトポルフィリンの活性はそれぞれDーマンニトール(ハイドロキシルラジカル消去剤)およびカタラーゼ(H_2O_2消去剤)によって著しく阻害され、ユーフラビンとは異なる作用メカニズムでDNA鎖切断を引起しているものと考えられる。今後このDNA鎖切断作用を指標としたスクリーニング系を用いて、ポルフィリン類、アクリジン、キサンチン、チアジン、キノリン化合物のなかから、人や動物に毒性が少なく、癌などの異常増殖細胞にたいする光増感致死活性の高い光増感剤を探索するとともに、それらの光増感障害の誘発メカニズムを追究していく予定である。
|