光化学治療に有効な光増感剤を開発する目的で、1)簡便で確実な光増感物質のスクリーニング系を確立する、2)個々の光増感剤がそれぞれどの生体成分に作用し、光照射によりいかなる生体障害が誘発されるか、3)個々の薬剤がそれぞれどのような反応メカニズムで光増感障害を引起すか、を検討した。既知の光増感物質アクリフラビンは酵母にたいし、「細胞致死」「ミトコンドリア性変異(Petite誘発)」や「核性変異」誘発などの光増感障害を引起した。また酵母核DNA、大腸菌染色体DNAやプラスミドDNAの一本鎖切断も誘発されることが明らかとなった。さらにヘマトポルフィリンやケトプロフェン、アフロクアロンなどはヒト赤血球にたいして光溶血活性を示した。この光溶血活性と赤血球脂質過酸化能との間に密接な相関性が認められた。それぞれの細胞障害の誘発を指標として光増感物質を有効にスクリーニングできるか検討した。「酵母の核性変異誘発系」「ミトコンドリア性変異誘発系」「光溶血系」は検出できる光増感物質度が限定されていてあまり有効ではなかった。これらと比較して「酵母の細胞致死」および「プラスミドDNA一本鎖切断の誘発」を指標とするスクリーニング系はそれぞれ多くの薬剤の光増感性を確認することができ有用と考えられる。特に後者は抽出したDNAにたいする作用をin vitroで検討できるための操作も簡便で、多数の薬剤について短期間で追究できるなどの利点を持っている。ユーフラビンの光増感によるDNA鎖切断活性はNaN_3などの一重項酸素消去剤で著しく阻害される。一方クロルテトラサイクリン、プロトポルフィリンの活性はそれぞれD-マンニトールやカタラーゼなどのユーフラビンとは異なる活性酵素消去剤によって阻害されることが示された。今後この光増感剤のスクリーニング系を応用して、ポルフィリン類、アクリジン、チアジン、キサンチン、キノリン系化合物のなかから有効で副作用の少ない光増感物質を探索していく予定である。
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