研究概要 |
(1) NBCFの大量精製 微量では既に純化したが, 大量規模では高分子蛋白が混入したため, 新たにHPLCを付加し単一蛋白とした. (2) NBCF産生とグルタミン代謝 NBCF産生はグルタミンの過剰添加で増大し, 転写段階とこれ以降で調節され, プリン塩基供給にグルタミンが律遠因子として関与すると示された. この原因は, 新生期脳が成熟期と比較して, 細胞質でのグルタミン代謝酸素のうち合成活性が低く分解活性が高いというグルタミン不足状態が成立することに存する. (3) NBCFの産生部位 マウスだけでなくブタでもプログラム細胞死を起こす新生期大脳が癌細胞増殖抑制物質を分泌するが, 小脳は分泌しなかった. その分子量は12-22万と0・5-1万の2種で, NBCFの種の進化に伴う保存の点からも興味深い. また, 同時に増殖促進因子(分子量1・4万)も産生され, 抑制因子と併せ増殖制御への関与が示唆される. (4) プロテアーゼとの関連 NBCFはペプチダーゼ活性を示さず, その細胞増殖抑制作用はプロテアーゼ阻害剤で防げられず, また, 脳から産生される間プロテアーゼ分解をうけない. 固定化トリプシンで処理すると失活するので, 活性本体は蛋白質である. (5) NBCF分子の糖鎖部分 ボロネート5PWに保持されるので糖鎖を含有する. その産生は新生期脳の培養液にツニカマイシンを加えると激減し, またノイラミニダーゼ等で処理するとN末端の増加なく活性が低下した. 従ってNBCFの分泌, 安定性維持や活性発現への糖鎖の関与が示唆される. (6) NBCFの科学構造の解析とNBCF抗体の調整 本年度は生物学的特性に関する基礎データを相当量蓄積し, かつ, NBCF精製の規模増大で予想外の純度低下があり時間損失したが, 既に大量の精製NBCFを得たので, 本項は63年度初に実施し, NBCF抗体を用い脳神経の発生と機能発現でのNBCFの生理的役割を解析する.
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