1.被膜RNAウィルスの感染過程には宿主細胞の膜系が関与する。PS要求株(PSAー3株)を用いてシンドビスウィルスの感染における宿主膜リン脂質の役割を検討した。その結果、PSがシンビスウィル感染過程のうちウィルス膜とエンドソーム膜の膜融合に重要であることが強く示唆された。 2.PS要求株のPS要求性を相補する遺伝子をCHO細胞ジエノミックおよびCDNAライブラリーから2種類単離することに成功した。これら遺伝子の詳細については現在さらに検討中である。 3.PSの生合成調節機構が異常となった変異株(#29株)をポレエステル布レプリカ法を用いて分離することに成功した。親株に於けるPSの生合成は培地にPSを加えると特異的に抑制されるが、#29のPS合成はその抑制を受けないことが明らかとなった。更に、PSの生合成酵素の酵素学的解析から、#29株はPS生合成調節機構に異常を有する変異株であることが示された。今後、この変異株を用いることによりPSの生合成調節を分子レベルで明らかにしたいと考えている。 4.イノシトールリン脂質の生合成に必須であるイノシトールの輸送系に関し、CHO-KI細胞にはNa^+ー依存性および非依存性の2つの輸送系が存在することを明らかにした。さらに、Na^+ー依存性輸送系に特異的な欠損を有する変異株を分離することに成功した。この変異株を用い、この細胞の変異を相補する遺伝子のクローニングを行い、輸送体の生化学同定へと研究を発展させたい。 5.CHO-KI細胞からグルコース輸送欠損株を分離しその性状解析を行った。その結果、この変異株ではグルコース輸送体量が著しく減少していることを明らかにした。この変異株はグルコース輸体の機能を研究する上で非常に有用であると考えられる。
|