研究概要 |
早期の動脈硬化性病変や血栓の検出は, 血栓症の早期治療を可能にし臨床上重要である. 従来, 血栓性病変を血小板集積の側面より評価するRI標識血小板イメージングを行ってきたが, 血栓形成にはフィブリンも大いに関与することが知られている. 本研究では, フィブリンに親和性の高い組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)に放射性同位元素(RI)を標識し, invivoでのフィブリン集積部位をガンマカメラにて非侵襲的に可視化することにより血栓症の病態を解明することを目的とした. 動脈血栓モデルとしては, 家兎大動脈をバルーンカテーテルにより内膜剥離することにより作製した. 内膜剥離部へのフィブリン集積はマロリーのフィブリン染色により確認した. t-PAへのRI標識(I-131)はヨードゲン法により行い, 標識操作後もt-PAの生理活性が保たれていることを発色基質(S2251)を用いた比色法とリジンセファロースカラムを用いたマフィニティクロマトグラフィーにより確認した. I-131標識t-PAの家兎血中半減期は2.9±0.4分と短時間であることも明らかとなった. 家兎大動脈を, I-131標識t-PA静脈内投与後15分もしくは30分に摘出し, フィブリン集積のある内膜剥離部と正常血管部の比放射能を測定することによりI-131標識t-PAの血栓性病変部への集積性を検討した. 本研究により, 病変部へのフィブリン集積とI-131標識t-PAの生理活性が保たれているにもかかわらず, 同部位へのI-131標識t-PAの集積はガンマカメラにて可視化するには十分に高くないことが明らかとなり, 血検イメージングのトレーサーとしては不十分であることが分った. 今後, フィブリン親和性を有するA鎖とセリンプロテアーが活性を有するB鎖とを分離してA鎖のみにRI標識を行い, 同様の検討を行うことも必要であると考えられる.
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