研究概要 |
1.地域医療教育の明確化 最新の医学・医療技術とともに, 住民(患者)の生活に密着した医療サービスの方法を教育することが, 今後の医学教育に不可欠であると考えられる. 単に知識・技術を教育するのであれば学内診療科をローテイトするだけでよいが, 行動態度面はそれだけでは不満足である. 我々は特に後者については, 卒前から実社会を場とする実習教育が, 必須のものと位置づけた. 2.包括的医療サービスのモデルの試行と, 卒前学外実習の試み 人口約千人の山間の地区(本学より15km)を選び, 当地の国保診療所・行政, 地域住民組織の協力を得て, 本学教官が特に在宅ケア, 健康診断, 慢性疾患管理を中心にモデル的な地域医療サービスを試行. これに6年次学生を参加させた. 一人当たり10時間の実習ではあるが, このような地域医療活動を通じて, 学内教育では得られない家族構成, 生活環境が, 特に子供, 老人の健康に及ぼす影響を実感として認識させ得たと考えている. 3.学生の地域医療への認識の評価の試み 実習前後に「医療」をテーマとした論文を記述させるとともに, そのキーワードを学生自ら選択させ, クラスター分析を行った. 事前の論文では自然科学的発想, および一般的な社会医療体制に関するテーマが主流を占めたのに対し, 地域での住民との交流によって得た, 患者, 医師関係の具体的な内容が増加, 多くの学生に意識変化をもたらしたことを客観視しつつある. 4.教育用健康記録データベースの蓄積 住民健診, 統計分析を通じて, 特に高齢者の健康情報を収集, 個人と, 集団の層別検索を可能なシステムを構築. 教育上必要な地域の健康に関する基礎的問題点が明らかになりつつあり, 今後の教育効果を高めるものと期待される.
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