ねらいは、卒業を目前にした時期に、学内での知識教育を素地として住民の生活に最も近い場所に身をおき医療活動を実体験さけ、光度に専門化した学内では、実地に即した教育ができない円滑な患者-医師関係の形成の糸口となる行動態度を教育することにある。 住民の定着性のよい山間の地および瀬戸内の島興(それぞれ人口約千人)を選び、当地の国保診療所を拠点に、保健行政と住民組織の協力を得手、保健-疾病医療-介護が一貫した医療サービスを試行するとともに、プライマリケアの実地教育を試行した。教育期間は、臨床実習が各科一巡した5〜6年次、2〜3名の小グループに分割して各人が10時間程度の実習が行えるよう日程を設定した。具体的な手法は、(1)往診に動向して、生活様式、環境と健康を関係づける意識を認識させる。(2)診療所の診療に同席して、日常的な疾患、慢性病の管理、急性病の初期診療を体験する。(3)地域集団健診に参加して系統的かつ定型的な集団健康診断の実施方法、および保健指導の方法を知る。(4)基幹病院、ディケアセンターなどへの引き継ぎの方法を知り、患者へ配慮すべき点を知ることである。このような地域社会を場とする実践教育は、地元の協力てくしては実現しない。本課題の一環として参加している地域健診の主体の町行政にとっては、人的なゆとりができ健診機会が増加し、総合的な健診が可能で、受診率の高揚に繋がるなど副次効果も大きい。また往診先の家庭は承諾を得た家庭であり、学生が訪問することが家庭内に閉じこもりがちな老人に生活意欲が増す例多いなどから積極的に受入られている。学生側は、実習前後に「医療」をテーマとする論文を提出させるが、実習後の内容がより具体的となり、医療-患者関係をとりあげる内容が多くなっている。さらにこの試行を基礎に、建学理念の柱でもある地域医療への貢献の具体化する「総合臨床医教育構想」を策定するに至った。
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