研究概要 |
ダウン症候群は精神薄弱では頻度の高い疾患の一つで我が国でも年間1500人位の出生があると推定される. 21番染色体の過剰がいかにして本症の発現に結びつくかは不明である. 遺伝子工学の発展によりこの染色体に存在する遺伝子の種類と機能を解明する道筋が開かれつつある. 米国の共同研究者がクローニングしたヒト21番染色体由来の11ヶの遺伝子断片が元々あった局在部位を明らかにすることが出来た. この結果, 21番染色体の動原体部分に1ヶ, 動原体近傍(21q11)に2ヶ, 21qll-21q2l, 21q2l, 21q2l-21q22.1に各々1ヶ, そして21番染色体長腕末端(21q22.3)に5ヶの分布を確認した. 動原体及びその近傍の遺伝子は染色体不分離に関わるという報告があり, 不分離によるダウン症発生の研究に用いることが出来る. 21q22.1と21q22.3部位はダウン症の主な症状がこの部分だけの重複(トリソミー)によって生ずるとされることから, ダウン症症状発生の機構の研究に用うる可能性を確認できた. また本年の研究費によって購入した巨大DNA電気泳動装置についてS62年夏, 京都大化学研究所での講習会に参加し, 基礎理論, 具体的手技の研讚を行なった. 当教室でも実際に運転可能とした. 今後これらのDNA断片や更に新らしく確保される21番染色体遺伝子について原位雑種形成と巨大DNA電気泳動装置により相互の位置関係=遺伝子地図つくりへの準備が出来た. 顕微鏡部品としては新らたに干渉フィルターを購入し, より鮮明な染色体精度分析写真を撮影できた. このようにして顕微鏡下に観察するしか出来なかった染色体に遺伝子操作や解析が可能であることを示した.
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