1)ヒト21番染色体の無名DNA断片とcDNAの原位(in situ)雑種形成によるマッピング ヒト21番染色体のみを過剰に有するマウス雑種細胞を用い、コスミドベクターにてワトキンスラの精製した無名DNA断片11ケの21番染色体局在部位を決定した。即ち、5ケは21q22.3、2ケは21q11、そして残りの4ケは21q11-q21、21q21、21q21-q22.1と動原体近傍に決まった。更にマウスcDNAをもとに、セルソーターで分離したヒト21番染色体ライブラリーから相補性あるDNAクローンを選択。2ケのDNA(pGC18と42)は各々、21q21、21q22.3に座位を決定できた。従ってダウン症候群の主症状発現にかかるq22部位から、無名DNA断片5ケ、cDNA対応を1ケ検出できたことになる。このような研究法とDNAは同疾患の病態発現に重要な知見をもたらすことが判る。 2)巨大DNAのパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFG)による解析 昭和62年度の巨大DNA電気泳動装置(LKB社パルサフォー)購入と同器使用講習会参加後、酵母染色体、大腸菌及び組換え大腸菌とヒトリンパ球DNAを制限酵素NotIで切断し、PFG解析の条件設定を行った。昭和63年度は泳動条件改善のため循環恒温装置(LKB社マルチテンプII)を購入し、21番染色体のDNAを酵母I染色体(YAC)ベクターに組込んだ酵母試料の解析を行った。酵母からサイズマーカーを調整し、各DNAインサートの大きさを決定。比較は小さい約6Kbのものと判明した。今後更に大きいインサートを得る工夫と解析の基礎を作った。 日常の染色体異常症の診療と療育指導、遺伝相談を行うにもこのような仕事の発展が重要であることは明らかである。
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