研究概要 |
肝のチトクロームP-450はフェノバルビタールや3-メチルコランスレン等の薬物を実験動物に投与することによって増加することが良く知られているが, 正常肝においてこれら"被誘導型"分子種の含量が極めて少ない原因については不明であった. 研究者らは常在型チトクロームP-450が下垂体ホルモンによって調節されていることを最近明らかにしたが, "被誘導型チトクロームP-450についても同様の発現, 調節機構が存在するものと考え以下の実験を行なった. 正常および下垂体摘出ラットより肝ミクロゾームを調整し, フェノバルビタール誘導型P-450, P-450bおよびP-450e, 並びに常在型P-450, P-450-maleおよびP-450-male II(P-4506β)の含量変化を調べた. その結果, 無処置ラット肝には極めて微かしか存在しないP-450bとP-450eのレベルは下垂体摘出によって10〜50倍にまで増加した. この増加は下垂体摘出ラットに成長ホルモンを持続注入することによって打ち消された. しかしながらプロラクチンの投与は何ら変化を起こさなかった. これらの結果からフェノバルビタール誘導型P-450のP-450bとP-450eは下垂体ホルモン殊に成長ホルモンによる抑制的な調節を受けていることが明らかとなった. 一方常在型P-450のP-450-maleは下垂体摘出によって著しく減少し, 成長ホルモンの間欠的投与によってその含量は無処置雄ラットレベルにまで回復した. これらの結果から, P-450-maleは成長ホルモンによってその含量が促進されることが判明した. これらの結果は従来考えられていた以上に内分子ホルモンが肝チトクロームP-450の調節に関与していることを示している. これら内分泌ホルモンの調節機序についてはmRNAを用いた実験によって転写レベルで行なわれていることが示唆された.
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