研究概要 |
可溶性分画アミノペプチダーゼ(C-LAP)は, 肝の可溶性分画に多量に存在し, 肝細胞障害で血中に著しく上昇する. しかし, 明らかな肝細胞障害を伴わなくても, 白血病, 悪性リンパ腫などの血液悪性腫瘍, 伝染性単核球症などのウィルス感染症でも血中に上昇する. 本研究は, この上昇の機序を明らかにすることを目的としている. 本年度は肝以外の臓器も含めて, この酵素の精製と, それに対する抗体の作成を中心とした. また, その間に, 風疹, 麻疹の患者を中心に時系列的な可溶性アミノペプチダーゼの血中での変動を観察した. (Clin, Chem, 34, 印刷中, 1988) さらに, 血液悪性腫瘍でのC-LAPの変動を症例を追加して解析した. (Clin・Chem・準備中) 本年度の成果は 一)肝由来の酵素に対する抗体を2種類用意することが出来た. 2)この抗体を用いて, さらに肝酵素の精製を続けた. 3)風疹の患者で感染初期に, 発疹の出現に先立つか, 出現とほぼ同時期にC-LAPは血中に著明に増加する. 3-6日を極期として酵素活性は低下するが, 遷延する症例は肝細胞の軽度の障害を伴ってくる症例である. 酵素活性の低下を待って風疹の抗体価は上昇してくるので, 早期診断に重要である. また, 麻疹の患者ではこの酵素活性の上昇は発疹の極期でも著明ではない. 4)白血病の中では, 急性単球性白血病で上昇が著明であり, 90%の症例で, 肝酵素の上昇なしでの酵素活性の上昇が観察される. MDSなどでも上昇する症例が存在する.
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