研究概要 |
可溶性分画アミノペプチダーゼ(EC 3.4.11.1 C-LAP)は、肝、腎、リンパ節などの組織の可溶性分画に豊富に存在する酵素である。したがって肝炎を中心とした肝細胞の損傷で、この酵素活性が血清中で著しく上昇することが知られていた。しかし、この酵素活性の軽度の上昇が、肝由来と考えられる他のトランスアミナーゼの上昇を伴わない状態で、白血病、悪性リンパ腫などの血液悪性腫瘍の一部、麻疹、風疹などのウィルス性疾患にも認められることが明らかにされてきた。本研究の目的は、このCーLAPの上昇の機序を解明することにあった。 本研究の成果は以下にまとめることが出来る。 1)各種病態でのこの酵素活性の変動は電気泳動分析を中心に行われてきたが、特異性に多少の問題があることが判明し、新たな課題として他の血清中アミノペプチダーゼの阻害剤のスクリーニングを行い、この阻害剤を用いた特異性の高い測定法が開発出来たことである。これによりより確実に病態での酵素活性の変動が観察可能である(臨床病理、投稿中) 2)肝障害の種類を、特に急性および慢性肝炎群、肝硬変群、原発性肝癌の3群を、このCーLAPとLDH5の比を用いることにより判別することが可能である。(臨床病理、36,1987) 3)ウィルス性疾患のなかで、伝染性単核球症、麻疹では発症初期からのこの酵素活性の上昇が認められることが明かとなった。LDHのアイソザイム分析の結果などとも併せて、この上昇した酵素活性はリンパ球由来であることの可能性が考えられた。(AJDC 142,1988) 4)血液悪性腫瘍でのこの酵素活性の増加がT細胞に由来する腫瘍で頻度が高いことが判明した。悪性リンパ腫などの診断、治療にこの酵素活性の測定は有効である。(準備中)
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