研究概要 |
ヒト-るふぁ_1-T glycoprotein(α_1-T)は、1964年Heide,Hauptによりリバノール硫安塩析法により血清から分離された分子量60,000の糖蛋白質であり、その分子構造、物理化学的性状、機能、臨床的意義などは不明な点が少なくない。そこで著者は、種々のクロマトグラフィー法などの新しい方法を駆使してα_1-Tを血清から分離精製し、主な物理化学的性状を決定、一部アミノ酸配列も決め(未発表)、更にラビット、マウスに免疫として特異抗体を準備し、主に単純免疫拡散法(血清用)、酵素免疫測定法(主に尿)を確立し、病態検査上、肝予備能の検定に有用性が高いことを示した。一次構造の決定が今後の課題として残されている。 昭和62年度:I.α_1-T精製法の確立。正常有プール血清を40%硫安で塩析後、上清を75%まで飽和しα_1-T rich分画を得て、Con Aアフィニテークロマトグラフィー、抗アルブミン抗体結合アフィニテークロマトグラフィー、Blve Sepharose CL-4B_2で可及的にアルブミンを除去後、ゲル液過法、イオン交換クロマトグラフィーで精製品を得た。精製品を免疫原としてモノクローナルを準備し、アフィニティークロマトグラフィーによ精製効率の高い方法を確立した。II.α_1-Tの主な物性。分子量77.500、等電点PI4.5、アミノ酸組成の分析ではトリプトファンが検出されず、部分一部構造の決定。他の既知の蛋白質との構造の相同性はない。 昭和63年度:α_1-T測定の臨床的意義の検索。10才〜60才までの健常者の血清α_1-T濃度は71.8± 12.3mg/lで男女差、年令別変動はない。肝実質障害を呈する病態では血中濃度の低下があり、肝炎の回復期、薬剤性肝障害の改善などの肝実質細胞の再生を反映して血中濃度の回復期、薬剤性肝障害の改善などの肝実質細胞の再生を反映して血中濃度の増加が見られる。正常者の1日尿中排泄量は0.02mg/日であった。 α_1-Tの研究成果の発展と研究設備、器具等の充実により、従来からの低分子蛋白に関する研究についても応分の成果が得られた。
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