1.高脂血症患者から超遠心法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル炉過法、ヘパリン・セファロースクロマトグラフィーにより血清リポ蛋白中からアポリポ蛋白H(β_2糖蛋白I、以下アポH)を精製した。この精製アポHを家兎に免疫し、得られた血清を硫安分画法でγ分画に粗精製したものをポリクロナル抗体とした。また、マウス(BALB/C)に免疫し、2週間後に脾細胞を取出し、マウス骨髄腫細胞(SP-2)と細胞融合し、モノクロナル抗体を得た。作成したそれぞれの抗体を用いて、等電点電気泳動法によるWestern blotting法にて精製アポHの等電点を検索したところpI5.0〜6.3の範囲で8〜12本のアイソフォームが存在することが判明した。またアポHはノイラミニダーゼ処理により3本のバンドとなることも観察された。 2.ポリクロナル抗体を用いて一元放射免疫拡散法(SRID法)、ラテックス免疫比濁法の系を組み、各種患者血清を検索したところ、慢性肝疾患血清アポH濃度の低下、腎不全患者で高値を示した。また、高脂血症(IIb型、IV型)では変動がなく、Tangier病でも変化がなかった。このことから、少なくともアポHの主たる産生場所が肝であるを推定しえるものでり、またある種の高脂血症では血中アポHの変動はないものと思われた。 3.リポ蛋白レセプター(特にLDL-レセプター)でのLDL取り込みにアポHが慣用しているか否かを知るために、^<125>I-ラベルLDLを末梢単核球細胞に取り込ませる系(ラジオレセプターアッセイ)にアポHを添加して、その取り込み率の変化をみた。その結果、患者血清から精製したアポHは健常者血清濃度範囲においてLDLの取り込みを抑制した。今後、これらのアポHの生物学的活性の詳細な検索を行うと共に、リポ蛋白代謝への関与について研究する予定である。
|