トカマク核融合炉において熱的不安定性を抑制し定常燃焼を実現させる方法として、プラズマの圧縮・膨張による制御が本研究代表者らにより以前提案された。今までの解析ではシェル効果を1次の時間遅れで表わした制御磁場モデルを用いた。本研究ではプラズマ、制御用コイルおよびシェルからなる磁気回路を考えることにより、制御コイルの励磁によるシェル上の渦電流効果を解析に取り込れ、圧縮・膨張制御に及ぼすシェル効果を定量的に研究した。まず渦電流をフーリェ余弦関数に展開し、0次および1次の項のみを考慮し自己インダクタンスおよびプラズマ、制御コイルとの相互インダクタンスをアスペクト比が大きいという近似を用いて導出した。これを用いてプラズマ、制御コイルおよび渦電流の2つのフーリェ要素に関する磁気回路方程式を定式化した。プラズマの温度を測定し目標値からのずれを制御コイルの電源電圧に帰還する制御を考え、系の安定性を線形安定解析により調べた。すなわち、プラズマの温度平衡式と位置平衡式(シャフラノフの式)を線形化し、線形化された回路方程式と連立させ、この方程式系の固有値の実部が負である条件(安定条件)より安定化に必要な制御利得をシェルの電気抵抗の関数として求めた。不安定性の成長率はプラズマのエネルギー閉じ込め則に強く依存するので、ここでは4種類の比例則について調べた。Kaye-Goldston則の場合、SUSシェルの厚みが30cm以下、最もきびしいMirnovのHモード則の場合、SUSシェルの厚みが7cm以下であれば圧縮・膨張による熱的安定性の制御は制御コイルに加える電圧を温度の平衡値からのずれに比例して帰還制御することにより導電性シェルがある場合にも安定化できることが明らかになった。
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