座標系・座標値は形状の表現手段として二次的で便宜的なものであることを反省し、形状を構成する要素間の相互拘束を優先度の高い情報とみなして利用することの工学的意義について検討し、以下のような研究成果を得ることができた。 1.稜線の長さや面同士の交角などの相互拘束を用いて形状を表現するときの拘束の間の独立・従属性の構造を明らかにした。形状要素が互いに一般の位置にある場合には形状の組合せ構造によって、また特殊な位置にあって退化が生じる場合には形状の代数的構造によって、それぞれ独立・従属性を特徴づけた。 2.1の成果を、形状定義の適性さの判定、自立ロボットの視覚センサによる位置決め、距離画像を用いた物体の識別、などに応用した。 3.形状自身は病理的な性質をもっていなくても、座標系を特殊な位置に設定することによって例外的な事態が生じ、情報処理が難しくなるという問題に、一つの解決法を与えた。これは、点同士が特殊な位置にきたときには、それらの座標値に記号的な摂動を加えることよって一般の位置に帰着させるという方針によるもので、この方法によって、陰線消去算法、ボロノイ図構成算法などにおける例外処理をなくすことができた。 4.座標値等に含まれる数値誤差が原因となって生じる形状表現の矛盾を回避するために、数値的判定結果に矛盾が含まれる場合には、位相構造を優先させるという方法を、ボロノイ図構成算法に組み込み、アルゴリズムの数値的安定化に成功しつつある。 今後は、本研究で得られた新しい知見や方法論を、ソリッドモデリング、地理情報処理などの具体的形状処理アルゴリズムに適用し具体化していく予定である。
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