本研究では、ブラインドタッチタイピング教育システムにおける学生の認知モデルに関する検討を行なった。具体的な研究成果は、以下のようにまとめられる。1.パーソナル・コンピュータPC-9801上で稼動しているタイピング教育システムを改良し、打鍵文字、打鍵間時間等のデータをログファイルに記録できるようにした。2.主にタイピング経験のほとんどない者にタイピング教育システムを使用させ、データを収集した。同時に、ビデオテープ(VTR)により、被験者の様子を撮影し、検討材料の一つにした。3.PC-9801上にログファイル内のデータを効率的に解析・検討できるよう、データ解析ツールシステムを作成した。4.設備備品費により購入したワークステーションDS7540IIと、PC-9801とを接続するためのインタフェイス・ソフトウェアを作成し、ログデータ等をDS7540IIに転送できるようにした。5.PC-9801上に作成したデータ解析ツールをDS7540II上に移植し、解析作業の効率化をはかった。6.学習者の認知モデルを、熟練者の認知モデルが形成される過程と、誤りを含んだ認知モデルという二つの観点から考察した。その結果、キーボードを見ないという指示を忠実に守って練習する学習者は、比較的早い段階から、熟練者のもつコード変換機能と同様の機能を習得し、練習を繰り返すことによって、出力バッファを徐々に大きくしていくことがわかった。また、ハント&ペックを行なっている学習者については、熟練者のもつ出力バッファとは異なる記憶バッファを形成していることが判明した。今回指摘した認知モデルは、十数名の学習者による実験データをもとに考察したものであり、今後、大量の学習者集団に対する対照実験などを行ない。統計的な考察を行なうことが望まれる。
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