米澤らによって提案された並行オブジェクト指向計算モデルABCMを手続きおよび関数をオブジェクトと統一するルーチンオブジェクトを導入することにより拡張し、プロセス世界、すなわちプロセスを活動単位として存在せしめる環境、を作り出すことを可能にしたC言語版並行オブジェクト指向言語ABCL/C^+を設計し、その処理系の試作およびオペレーティングシステム核を記述することを試みた。その結果、ABCLのような簡潔にして強力な並行オブジェクトを記述する能力をもつ言語であれば、きわめて分りやすく見通しのよいオペレーティングシステム核を記述できることが確められた。しかし、現実の問題として処理系の吐き出すコードの効率が残されている。一般のアプリケーションとは異なりオペレーティングシステム核ともなると実行効率が死命を制するからである。したがって、現在、light-weightプロセスの概念を取り入れた、オブジェクト(プロセス)の管理・制御を軽くする処理系に向けての改善に努めている次第である。この方式の有効性は、この処理系が吐き出すオブジェクトコードを定め、それを用いて小型ではあるが我々の考えにもとづいたオペレーティングシステム核をパーソナルコンピュータPC-9801上に実現し、その上に実験的なウインドウシステムを試作することによって確認している。
|