本研究は総合的数式処理システムに関して、その構成と開発の基礎を実際のプログラミングで実証しつつ研究するものである。総合的数式処理の具体的描像としては、従来の数式処理を核に、(1)高等数学演算部、(2)数値計算・グラフィックスとの融合、(3)数学公式デ-タベ-スの装備とその自動運用、の三つの進んだ機能を追加したものを考えている。 機能(1)は、従来の多項式や有理式などのデ-タ型に加えて、代数的数や代数関数、集合式や群など、多数のデ-タ型の組込を必要とする。これを下手に行うと、システムが複雑化してバグの原因となり、計算効率が下がる。本研究では、デ-タ型が全体として一般性と簡単さをもち、したがってデ-タ表現の枠組が複雑にならず、かつ計算効率が落ちないよう、数式の内部表現を何度も試行しながら決定した。また、内部表現に直結した核レベルのプログラムでバグを減らすよう、複雑ではあっても定形的な部分は「ひな型」プログラムに統合し、一部はプログラムを自動生成する機能を設けた。アルゴリズムのインプリメント用には、抽象的にデ-タ構造を操作できるよう、多数のデ-タ構造操作用コマンドを用意した。かくして、多種多様のデ-タ型をもち、内部表現にそれほど依存しないプログラミングが可能で、しかもREDUCEに比べて数倍の計算効率を持つ、総合的数式処理システムの核がほぼ実現できた。 機能(2)に関しては、数値計算用のFORTRANプログラム、数式処理用のLispプログラム、などをオペレ-ティングシステムを介して結合する簡単な方式を考案し、インプリメントして実現容易性を示した。さらに、数値計算と数式計算の両方の計算法を融合化した算法をいくつか考案し、その有用性を示して、それらを「近似的代数算法」と名付けた。 機能(3)に関しては、前回の研究で考案したインデックシング法の不備を発見し、改善したが、自動運用法の研究には時間が足りなかった。
|