本年度は、赤血球凝集性脳脊髄炎ウイルスに対する抵抗性が、免疫機能を抑制することにより、減弱するかどうかを見るため、各種免疫機能不全マウスに対する実験感染を行ない次のような成績を得た。 1)免疫抑制処置マウス(プレドニゾロン、サイクロフォスファミド投与マウス)はPBS投与対照群との間に、有意な抵抗性の差を認めなかった。2)BALB/C nunu(T細胞機能欠損)、C57BL/6J-bg(NK細胞活性不全)、CBA/N(T非依存性B細胞機能不全)の各近交系マウスのHEV抵抗性は、C57BL/6J-bg>BALB/C nunu>CBA/Nとなったが、C57BL/6J-bg、BALB/C nunuでは各々の対照系統との間に有意な差を認めなかった。CBA/Nは対照系統のCBA/Jに対しやや抵抗性が低かった。3)BALB/C nunuでは充分な液性抗体の産生が認められたが、CBA/Nでは不充分であった。4)免疫マウスの血清を移入することにより、新生仔マウスに抵抗性を伝達できたが、免疫マウスの脾細胞では抵抗性を伝達することはできなかった。5)感染耐過マウスの血清の移入では、新生仔マウスへの抵抗性の伝達は不完全であった。 これらのことから、HEV感染の成体マウスでは、T細胞非依存性の液性抗体産生が見られ、これが成体マウスの抵抗性に影響すること、これらの免疫機能は、T細胞機能、NK活性とともに、成体マウスのHEV抵抗性の重要な部分ではなく、他の要因も存在することが示唆された。 なお、以上の成果の一部を第106回日本獣医学会において発表した。
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