本年度は、感染マウスの病理組織学的検討と、これまでの補足実験およびまとめを行った。 1.感染マウスの病理学的検討 新生仔マウスおよび成体にHEVを感染させ、HE染色、組織酵素抗体法により、病変、ウイスル抗原の存在部位を観察し、次のような知見を得た。(1)感染マウスは、中枢神経系の病変が顕著であり、他の臓器では肺のうっ血、間質への細胞浸潤がみられた。(2)中枢神経系の病変は大脳皮質の広範囲の細胞壊死、崩壊であった。(3)ウイルス抗原は、大脳皮質錘体層の神経細胞、小脳プルキンエ細胞、in感染時の臭神経索中の神経細胞に局在していた。(4)病変、ウイスル抗原ともに、inよりic感染、成体より新生仔が明瞭であった。 2.補足実験 前年度までの補足として、各種系統マウスの新生仔および成体でのHEV抵抗性を定量的に比較するため、それぞれでのLD50値を算出した。その結果、(1)脳内(ic)、鼻腔内(in)共に、生後2週まで抵抗性が徐々に高まり、3週以降はほぼ同レベルを保った。(2)新生仔と成体の抵抗性の差は、ic感染の方がin感染よりも顕著であった。 これらのことから、HEVは感染局所から神経を介して中枢神経に到達し神経細胞で増殖すること、マウスの年齢依存抵抗性は脳内でのウイルス増殖と直接関連し、ウイルス伝播の過程への関与は薄いことが明らかになった。
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