研究概要 |
赤血球凝集性脳脊髄炎ウイルス(HEV)感染に対するマウスの年齢依存抵抗性に関する要因について、種々のマウス系統、感染経路、年齢で感染実験をおこない、特に免疫機能との関連を調べた。HEV MB-67N株は、マウスに急性の中枢神経炎を起こし、死亡させた。本ウイルスは、向神経性が強く、中枢神経系(CNS)で特異的に増殖し、特に大脳皮質の神経細胞、小脳のプルキンエ細胞にウイルス抗原の局在が確認された。in感染では、ウイルスが末梢から嗅神経を経由してCNSに到達することが明らかになった。新生仔と成体との間で、これらの感染経過に質的な差はなかったが、感染致死に対する明らかな年齢依存抵抗性が認められた。 この抵抗性は、in感染よりもic感染で顕著であること、生後14日まで徐々に抵抗性が増し、それ以降、成体とほぼ同程度の抵抗性を示すことが明らかになった。また、成体のHEV抵抗性は、遺伝的背景の異なる数種の系統間で差がみられたが、先天性免疫機能不全(T,B,NK細胞機能不全)マウスや免疫制抑制処置を施したマウスにおいて抵抗性の減弱は認められなかった。 マウスのHEV感染に対する年齢依存抵抗性は、ウイルスの体内伝播の過程で働く免疫機能の成熟の程度との関連は薄く、CNS内の神経細胞での増殖自体に差があると考えた。これには、CNSでの感染初期のインタ-フェロン産生や神経細胞自体の分化、成熟が関与しているかも知れない。
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