研究概要 |
脳梁欠損マウスは, 脳梁の完全欠損と部分欠損(脳梁の幹部は存在し, 膝部或は膨大部を欠損している)に分けることができる. 戻り交配を二回に互って行った現在までの結果では, 完全欠損マウスの出現率は約2%〜8%の間にあるが, 部分欠損マウスの出現率は向上し, 両者を合わせて約35%に定着しつつある. 左右の前頭部及び頭頂部の大脳皮質と小脳皮質に計5極のステンレス線の電極を慢性的に植え込み, 左右の前頭と頭頂部, 左右の大脳半球間, 左の前頭部と右の頭頂部, 或いは右の前頭部と左の頭頂部の交叉, 更には左右の前頭部と小脳皮質, 左右の頭頂部と小脳皮質の計10の組合せによる皮質脳波の相関をコンピューター分析したところ, 脳梁欠損マウスでは, 左右の前頭と頭頂部, 左右の大脳半球間, 及び左右の頭頂部と小脳皮質間の相関が, 正常マウスと比べて著明に減少しており, 或る場合には負の相関が認められる場合もあった. 又, 光刺激, 音刺激, 体性感覚刺激を与えると, いづれの刺激に対しても相関は大となり, より興奮の状態になったためと考えられる. これに対し, 脳梁部分欠損マウスは, 対照の正常マウスとの間に皮質脳波に差が認めされなかった. 脳梁の欠損, 或いは正常は, いづれも, 実験終了後, 脳を摘出し, 10%のホルマリンで固定の後, 正中断を行い実体顕微鏡の下で観察し判定したものである. 又, 一部は組織学的標本とし, パラフィン切片を作り, 染色の後観察に回している. ヒトでテンカン様発作が重度の場合, 脳梁切断を行えば発作が止まる事は良く知られている. しかし, 発作を生じる患者のCT像から脳梁欠損が発見される例が報告されている. このddN系マウスも生後数ケ月して床変えの時ケイレン発作を生じる例が見付かり, しかも脳梁欠損を併っている例がある. Elマウスのケンレンも床変え時の発作発生から発見されたものであり, 今後解明していく予定である.
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