脳梁欠損マウスは脳梁の完全欠損と部分欠損に分けられる。又、顔面の偏平なマウスは脳梁が完全に欠損している。顔面は正常でも脳梁を完全に欠損しているマウスもある。もし顔面偏平マウスが出現すれば生前から脳梁欠損マウスとして実験に供することが可能なので、顔面偏平マウスを親として兄妹交配や、戻り交配を行えば顔面偏平マウスや、脳梁欠損マウスの出現率が向上するのではないかと考え、遺伝学的開発を続行している。顔面偏平マウスは昭和63年度は計5匹出生し、雌4、雄1であった。出現率は2.5%で昨年度より0.5%向上した。遺伝学的開発は、継続は力也で、長期の開発が必要である事がわかる。また、脳梁の完全欠損と部分欠損を合計すると出現率は約35%に定着している。 昨年度で大脳半球の皮質脳波が脳梁完全欠損マウスでは左右非対称であり、部分欠損マウスは正常と差があく、左右対称である事が判明したので、本年度は光刺激及び体性感覚刺激による誘発電位に脳梁が如何に関与しているかを調べた。先ず光誘発電位は、脳波計に附属している閃光刺激装置からガラスファイバーで光を誘導し、ネンブタール麻酔下のマウスを脳定位固定装置に固定し、左眼に閃光を与え、右半球の視覚野から誘発電位をコンピューター加算装置を用いて200回加算して記録した。解剖学的にはマウスは視神経は半交叉であると報告されているが、ddN計マウスは電気生理学的には完全交叉であることが判明した。所で、左半球に入った情報は脳梁を介して右半球に転移するはずである。結果は、脳梁欠損マウスは正常マウスに比べ、著名な振幅の減少と、潜時の遅延が認められた。従って、脳梁以外の交連線維で情報が伝達されている事が考えられる。体性感覚刺激による誘発電位の場合も同様の結果を得た。又、脳梁の部分欠損マウスでは、正常マウスとの間に差が認められない。次年度は音刺激について同様の実験を試みる予定である。
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