研究概要 |
1.脳梁欠損マウスの遺伝学的開発。 回避学習用の実験動物として、回避学習が成立し易く、かつ繁殖力も強いddn系マウスを用いて、1972年から近交系の育成を続けている内、第30代から、時として顔面偏平マウスが出現し始めた。この顔面偏平マウスは今迄調べた38例中、全て完全に脳梁が欠損していることが組織学的検査によって明らかとなった。この顔面偏平マウスを親として、兄妹交配をすると、顔面偏平マウスは約0.5%,又,顔面は正常で、脳梁の完全欠損、及び脳梁の幹部は存在するが、膝部編め或いは膨大部を欠く部分欠損マウスを含めると約10%の出現率を示した。現在、顔面偏平の雌で4代、雄で1代を経ている。顔面偏平マウスは依然として約0.5%の出現率であるが、顔面正常で脳梁完全欠損、部分欠損を含めると、約35%へと向上した。 2.行動生理学的特性 (1)脳梁欠損マウスは繁殖力、移動活性度、回避学習能はいずれも正常マウスと差が認められない。 (2)脳梁欠損マウスは組織学的には-側の大脳半球から対側の大脳半球へ投射する脳梁線維が、対側に行かずUタ-ンをして大脳の吻側部に異常な神経縦束を形成している。 (3)脳梁欠損マウスの大脳、皮質脳波は左右非同期性を示す。部分欠損マウスは、正常と差がなく、皮質脳波は左右同期性を示した。 (4)脳梁欠損マウスは、電気刺激法やペニシリンによるてんかん発作発現が、正常マウスに比べ有意に発作が起こり易い。 (5)脳梁完全欠損マウスの光誘発電位は、対側の視覚野に投射し、同側には達しない。体性感覚誘発電位、音刺激誘発電位も同じ傾向を示した。更に、視交叉をも欠いた奇形が2例見られた。
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