研究概要 |
老齢(40週令以降, 雌)のddyマウスでは稀にIgA腎炎を自然発症することが報告され(今井ら, 1985)ヒトIgA腎炎モデルとしての可能性が注目されている. 本研究課題では, 生後5〜50週令ddyマウス(雌)を用い, 腸管に抗原感作し抗体産生(IgAを中心とした)惹起, それら特異抗体の腎糸球体への沈着機構について免疫組織学的な検索を光顕並びに電顕を用いて行った. 〔実験方法〕抗原はバーオキシダーゼ(HRP)(東洋紡社)を用いFreuno完全アジュバンドと共に注射針にて空腸並びにバイエル板に感作し, 2〜3週間後追加免疫を行い, 更に1週間経由した動物の腎臓を摘出, それら臓器での, HRP抗体の局材を酵素抗原法とDAB法により調べた. 一群の動物は腎臓摘出の3日前に尾静脈よりペリカンインクを局注し肝網内系機構抑制したものを用いた. また, HRP抗体とIgA抗体の相関については, 一部電気泳動法により両者の交差を調べた. 〔結果と考察〕最も強く腎糸球体にHRP抗体の沈着を見たのは老齢マウスの肝網内系機構抑制を行った例であった. それらでは糸球体のparamesangial regionに一致してHRP抗体の沈着を認め, 部分的なmesangial matrixの増生像など病変も認められた. FITG標識IgA抗体で反応を行ったところ, それらHRP抗体の沈着部に一致してIgA抗体の沈着を認めた. しかしながら, ヒトIgA腎炎に特徴的な血尿は, これらddyマウスでは認められなかった. また肝網内系機能抑制を行わなかった例でもIgA抗体の沈着を示す例もあった. 他方, 8〜10週令ddyマウスでも, 老齢マウス同様肝網内系機能抑制例に, HRP抗体の沈着を認めた. しかしながら特異抗体沈着の程度は老齢マウスに比べ弱いものであった. 本年度は, これら所見に加えNZW/F_1マウスを用い同様の実験を行い, これらの観察結果でのヒトIgA腎炎モデルとしての考察を行う.
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