稀に雌ddYマウスにみるIgA腎炎がヒトIgA腎炎モデルとして注目され、一連の研究を進めているが、特に乳癌の発症をみる老齢雌に高い割合で発症していることから、本年度は乳腺腫瘍由来免疫複合体に関連するかどうかについて、下記Iの如く実験を行ない検討した。また、ヒト血清腎炎モデルとして、食虫目スンクス口蓋扁桃に着目し、下記IIの如く実験を行ない検討した。 〔実験I〕40〜60週齢雌ddYマウス(20匹前後)を用い、パーオキシダーゼ(HRP)/Freund完全アジュバント混合液(2mg/ml)を乳腺部に0.01ml局注し、2週間後、追加免疫しさらに4日後にペリカンインク/生理食塩水(2mg/ml)を尾静脈より注入し、肝臓の細網内皮系機能抑制を行ない、さらに、3日後の動物での腎糸球体のHRP免疫複合体沈着を酵素抗原法を用い検索した。〔結果〕乳腺部HRP抗原感作動物では、昭和62年度の腸管HRP抗原感作例のような典型的なHRP抗体の糸球体沈着は殆ど観察することができなかった。したがって、乳腺部由来のIgA抗体というより、むしろ腸管由来IgA抗体の沈着の可能性が高い。 〔実験II〕免疫処理腎炎モデルとして、スンクス口蓋扁桃をHRP/Freund完全アジュバント混合液で感作し、2、3、4週後追加免疫を行ない、血清HRP抗体価を上昇させた後、それら動物の腎臓を摘出し、実験I同様HRP免疫複合体の糸球体沈着を調べた。〔結果〕約1/3の割合で、それらスンクス腎糸球体に扁桃由来HRP抗体のsubmesangial域での沈着とmesangial matrixの軽度増生を認めた。HRP抗体のIgM、IgG、IgAパターンについては現在、解析中である。 この所見は、スンクス扁桃を免疫処理することによって、ヒト扁桃原発血清腎炎モデルとして使える可能性を示したものとして注目される。
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