研究概要 |
1.TOF中性子線解析用電気炉を設計製作した. 試料空間10φ×25mmにわたりできるだけ均一な温度分布を得ること, バックグラウンド散乱を減らすことを主眼とした. 炉心文は二重構造にし, 内管, 外管, 横管にタンタル線を4系統に分割して巻き, それぞれの電流を独立制御する方式を採用した. 窓の散乱が直接検出器に入るのを防ぐため炉外壁に突出部を設け, ここに気密窓(アルミ板1mm)をつけた. 試験の結果, 900Kにおいて試料部の温度不均一性は3K以内, バックグラウンドもかなり低いことが分った. 2.上記電気炉を高ネルギー物理学研究所ブースター利用施設高分解能中性子線粉末回析計HRP上に設置し, BaBiO_<3-x>焼結体の回析図形を酸素分圧1KPa, 試料温度900, 1025, 1075Kで記録した(実験比:62年10月8〜15日). 雰囲気はアルゴン+1%酸素の混合ガス(1気圧)をフローさせ, 炉出口においてジルコニア・センサーで酸素分圧をモニターした. 各温度の回析図形には変化が認められる. 現在データを解析中である. 3.円筒形X線位置検出器を用いた迅速粉末回析計の特性評価……標準の水晶粉末試料から記録した回析線プロフィルを最小2乗フィッティング・プログラムで解析し, 回析計の特性を定量的に評価した. 平板試料に発散角0.2°のX線を照射角20°で当てる配置を用いると, 通常のQ-2Q走査型回析計と同等の分離能が得られ, ピーク・プロフィルは半値幅0.13〜0.2°の非対称Pearson VII関数でうまく近似できることが分った. 4.BaBiO_3の高温X線回析図形を900, 1025, 1075Kの各温度で測定し, 結晶系の解析を行った. 900Kでは立方晶であるが, 酸素欠陥が現われる1025, 1075Kでは立方晶と正方晶の2相混合状態になることが分った. また, 格子定数を決定した. 相変態の機構を酸素欠陥と関連させて検討した.
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