本科学研究費補助金による研究の全体目的は、シリコン中の微小欠陥をトポグラフ的に検出するX線散乱ラジオグラフィ装置の試作とそれによる材料研究である。今年度は、昨年度に引き続き、SSDを組みこんだ散乱ラジオグラフィ装置の試作開発を進め、これと平行して放射光実験施設における超平面波トポグラフィによる微小欠陥の検出を試み、所期の成果が得られたので、以下具体的に述べる。 (1)昨年度試作完了したX-Y走査装置にZ軸、O軸の走査機構を加えた。Z軸は散乱トモグラフィ観察のために必要である。O軸は本研究に関連するコンピータトモグラフィ(CT)の機能のためである。これでシンチレーション検出器を取りつけることにより、当研究で提案した散乱ラジオグラフィ観察が可能となった。 (2)SSD-マルチチャンネルアナライザ(MCA)のシステムは、ADCを50MHzから200MHzへグレードアップし、将来的発展にそなえた。SSDは、他研究費を使ってプリアンプ部を含め、今年度中期に整備した。(3)SSD-MCAのシステムと試料走査および、回折(散乱)データのサンプリングを一台のマイクロコンピータで行なわせるための制御プログラム全体を完成させ、システムが所期の設計どおりに作動することを確認した。MS-FORTRANを用いたこのソフト部分の作成作業が思いのほか時間を要し、63年12月末完成。(4)同上の新しいシステムを用いた各種材料の観察を行なった。用いる散乱線の種類によって、同時に数種の画像(トポグラフ)データが得られた。しかし、シリコンの散慢散乱線は実験室のX線源では弱すぎるので、高エネルギー物理学研究所で実験しなければならない。(5)超平面波トポグラフ観察に関して、消衰距離(3X^^<g)程度の薄いシリコン結晶を用いると微小欠陥の検出が可能であることを、平成1年2月27日の実験で明らかにした。
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