研究概要 |
本研究はコンピュータグラフィックの手法を用い, 複雑な鉱物および無機物質の結晶構造の原理を研究するのがその目的である. 構造原理の中でも特に重要なcell twinning, 即ち単位胞レベルの双晶機構をその主たる研究対象とする所に研究の特色がある. 研究方法としては此の目的に適したグラフィックスプログラムの改良が必要であるため, 本研究ではプログラムの改良とcell twinningの研究の2つの部分より成る. それぞれについての本年度の成果は次のように要約される. 1.プログラムCRYSTAL(PC/M-86)をMS-DOS上で動作するよう改良し, 同時に入力パラメーターのストア形式を改め, その呼出し, 再使用の方法を機能的にするときにパラメーターの設定変更を可能にした. また, イメジプリンターPC-PR8019とCPUとの基本的なシステムを完成し, 同プリンターによるハードコピーのテストを繰り返し, 良好な成果を得た. 2.プラジオナイトPb_5Sb_8S_<17>はa=13.49〓, b=11.87〓, c=19.98〓, β=107.2°, 空間群C_2/cの単斜晶系に属する代表的な硫塩鉱物の一つで, ガレナPbS型の原子配列をもったスラブより成る. そのスラブは(001)に平行で, 相互に[010]方向の2回回転操作で関係ずけられている. 即ちcell twinningで結晶構造が構成されているが, このスラブの境界はPbS型構造のirrationalな面に相当すると報告されていた. 今回, グラフィクスの手法を用いて此の結晶構造を種々の方向より詳細に検討した結果, (1)スラブの構造はPbS型よりむしろSnS型に近いものであり, また(2)境界面はPbS型構造の{323}のrational/s指数の面に相当することが明確にされた. この発見はcell twinningによる結晶構造論展開に対して基本的に重要な貢献とみなすことが出来る.
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