本年度は基本プログラムCRYSTALを改良したグラフィックス用のプログラムを更に完成度の高いものにリファインすること、およびコンピュータグラフィックスを応用して複雑な鉱物の結晶構造解明の例としてのプラジオナイトグループの結晶化学的性格を明らかにすることを研究目標とした。その成果は以下の通りである。 1.プログラムについては、リアルタイムの画像廻転という命題に対するパソコンレベルでの解として、ディスプレイ画面上に回転角を異にする4画面を分割して同時表示する方式を可能にした。個々の画像が小さくなる難があるが、回転による効果を全体的に把握するには便利であることが確認された。次に、与えられた一つの構造を薄い層に切断して表示することを可能にした。これは複雑な構造を理解するのに極めて重要な機構である。また、PC-PR801によるA4版のプリントを可能にするプログラムを作成した。以上の機能に加えて、プログラム全体を使用し易い形に改良した最終的プログラムはCRYSTAL18と命名された。 2.プラジオナイト、Pb_5Sb_8S_<17>の問題。前年度において、この硫塩がPbS型構造の{313}面を双晶面とするcell twinningであることが判明したが、本年度はグラフィックスによる更に詳細な検討の結果、プラジオナイトの結晶軸と、PbS型サブセルの軸との方位関係が完全に明らかにされ、それらの間の変換マトリックスを導くことに成功した。更に、検討をこのグループのメンバーであるフィレッパイトに押し進め、この鉱物もまた、プラジオナイトと全く同じ機構で結晶構造が作られていることが確認された。以上の結果を総合して、このグループの結晶構造を構成しているcell twinningの機構が完全に明らかにされた。この成功は、われわれの開発したコンピュータグラフィックスの手法が極めて有効であることを立証するものに外ならない。
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