1)加熱に伴うエキス成分の変化:アサリは通常加熱してから食されるが加熱に伴いエキス成分に生ずる変化をセファデックG-10ゲルろ過およびアミノ酸組成から検討した。セファデックスゲルろ過により、加熱することにより生エキスには存在しない低分子ペプチドのピークが出現し同時にタンパク質と考えられる高分子のピークが消失した。また、加熱により遊離アミノ酸量は減少するが、結合アミノ酸量は増加し、ゲルろ過の結果と一致していた。 2)アサリ、アカガイ、トリガイの呈味成分について:遊離アミノ酸組成は三者ともTau、Gly、AlaおよびArgが多い点は類似していた。アカガイではこの他にβ-Alaが、トリガイではOrnが著量認められた。結合アミノ酸については、トリガイにGlu、Gly、Leu、Lys等が著量検出され、アサリやアカガイとは異なる様相を呈した。 3)殻付きとむき身のアサリより得たエキスの違い:味は殻付きの方が良いとの評価を得た。組成を比較してみると両者の最も大きな違いはNa^+およびCl^-の量にあった。窒素化合物、その他のイオン類には大きな差は認められず、殻付きより得ただし汁の味の良さはNaCl量と関連しているものと推定された。 4)合成エキスのオミッションテスト:アサリ熱水抽出エキスの分析結果をもとにして市販の薬品を混合し、合成エキスを調整した。合成エキスは官能検査員により貝らしい味がする、アワビのような味がする等を評価された。オミッションテストはAxg、AMP、ベタイン、コハク酸、Tau、Glu、Glyおよびβ-Alaについて実施しこの中ではGlu、コハク酸、Gly、B-Ala、AMP等がアサリの味の発現に深く関与していることが明らかとなった。コハク酸の貝類の呈味発現に果す役割については今迄懸案事項であったが、本研究によりアサリの味に関係していることが判明した。
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