研究概要 |
1.醤油色素の分析法の開発:醤油色素はアミノ・カルボニル反応で生成するメラノイジンであるから(a)ゲル濾過カラムを用いるHPLCパターン(b)金属キレート能を利用するアフィニティークロマトパターンから色素の特徴付けを行った. (b)の方法は金属キレートセファローズ6BカラムにCu^<++>, Fe^<++>, Zn^<++>をそれぞれ結合し, 金属キレートカラムに対するアフィニティーを利用しマクロマトグラフィーを行った. その結果, 醤油色素のFe^<++>-カラムに対する結合は強すぎ, Zn^<++>-カラムに対する結合は弱すぎ, Cu^<++>-カラムが最良のクロマトパターンを示した. 一般に, 醤油の原液をCu^<++>-キレートカラムに負荷すると醤油のキレート能が強すぎ, Cu^<++>をカラムから引き離し再現性のあるクロマトパターンが得難いことを認めた. 通常1/10以下の稀釈してからpH7.6に平衡化したCu^<++>-キレートカラムにかけ, pHを7.6→4.5にグラジエント降下させ, 最後にEDTAで溶出する条件を設定した. 2.醤油色素の比較:日本をはじめ韓国, 台湾, 東南アジアの市販の穀醤, 魚醤計20種を入手し, パターン分析にかけた. その結果, 穀醤は魚醤より色素の平均分子サイズは大きく, 10,000以上が多い. 金属キレート能にもとずくUV吸収によるクロマトパターンによると, 穀醤は6成分以上, 魚醤は4成分以上に分かれた. 魚醤と標示された試料が穀醤と同様のクロマトパターンを示すものがあった. その理由は, 魚醤の色調を濃くし, 呈味性をよくするために穀物成分が醗酵過程で加えられ, アミノ・カルボニル反応が強くおこり, メラノイジン(穀醤タイプ)が生成した. したがって, 魚醤と穀醤の製造が独自に発達しながらも, 技術交流があったことが色素の分析においても示された.
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