研究概要 |
動物においては, 食事制限にともなう蛋白質摂取の減少が体蛋白質の分解によって補われるが, その初発反応の1つとして, 筋肉中の内因性プロテアーゼ活性の変動が挙げられる. 本年度は食事制限のモデル実験として, ラットの絶食時における筋肉中のカルシウム依存性プロテアーゼの活性変動を調べた. このプロテアーゼはその活性発現にSH基の還元を必要とし, その活性はカルシウム濃度により調節をうける. 絶食にともないカルシウム依存性プロテアーゼ活性は著しく増加し, 絶食4日後には対照とする正常ラットの約2.2倍に達した. これに対してカルシウム依存性プロテアーゼのインヒビター活性は絶食期間を通してほぼ一定の値を示し, 変動しないことが示された. また, カルシウム依存性プロテアーゼは高濃度のカルシウムを必要とする高カルシウム要求型プロテアーゼと低濃度のカルシウムによって活性を発現する低カルシウム要求型プロテアーゼの存在が知られているが, カルシウム濃度に対する感受性を調べた結果, 絶食によって活性の増大するのは低カルシウム要求型タイプのプロテアーゼであることが示唆された. 組織蛋白質の分解に関与する内因性のエントプロテアーゼとしてはカテプシンL, カテプシンBの存在が知られているが, ラットの絶食時におけるこのタイプのプロテアーゼ活性の変動を調べ, これら各プロテアーゼ間の相互作用を検討したいと思っている.
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