子どもに対する母親と父親の応答性が妊娠・育児の経過を通してどのように変容するかを明らかにするとともに応答性に影響する要因について検討することが本研究の目的である。 方法:第一子を妊娠中の夫婦を研究対象として3年間に亘る継続研究を行う。分析対象は13組の親子である。デ-タは妊娠初期、中期、後期、対象児の3・4ケ月時、7・8ケ月時、12・13ケ月時の6回に亘る家庭訪問により収集する。妊娠期間中の夫婦のデ-タは、胎児と新生児の発達に関するビデオフィルムを心拍計を着装して見た後、面接調査により入手する。出産後にはつぎの6種のデ-タを入手する。(1)母親と父親の応答性の評定(2)乳児が母親と父親と見知らぬ人に示す行動の評定(3)母親と父親か乳児に示す行動の評定(4)母親と父親による子どもの性格評定(5)母親と父親の養育行動の調査 結果:(1)胎児に関する映像に対して夫婦が関心を覚えた所と心拍の昂進が見られた所は一致している。しかし新生児に関する映像に対してはそのような関係は認められない。(2)3・4ケ月時の父親の応答性は他の月齢時の応答性と高い有意な相関を持っているが、母親の場合には有意な相関は見られない。(3)応答性の高い父親は1年間に亘って一貫して乳児に対して肯定的な感情を持ち、肯定的な関係を持っている。(4)応答性の高い母親の場合は、その様な一貫性が見られない。(5)育児に参加している父親の方が乳児に対して高い応答性を示す。(6)乳児が父母に示す行動には有意差は見られないが、母親に対して有意に高い心拍を示す。
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