研究概要 |
低タンパク食又は高タンパク食を動物に投与し飼育すると, 摂食量が著しく抑制される. A.E.Harperらはこの摂食抑制は脳中遊離AAの総量を維持する能力に関連することを示唆している. 本研究では低タンパク食又は高タンパク食時の摂食量抑制因子を脳・血漿中の遊離AAの動きや, 肝臓中のAA分解酵素活性の変化より解明することを試みた. 卵アルブミンをタンパク源とし, 飼料中のタンパク含量を3%, 5%, 5%以上は5%刻みに75%までの16種のタンパク含量の異なる飼料にて, 成長期のラットを一群10匹として10日間飼育した. この間の毎日の摂食量, 体重を計測し摂食状況を検討した. 11日目にラットをエーテル麻酔し心臓より血液採取, 肝臓・脳を摘出した. 血液は血漿を分離し脳は生食水を加えて均質化後, それぞれの遊離AA濃度を自動AA分析計にて定量した. 肝臓は均質にしたのちSDH活性をFreed-laudらの方法により測定した. 結果の概要は最大成長を示した10群を基準とすると3, 5%群と50%以上の群では有意に摂食量が減少し, これに伴って体重増加も劣った. 血漿遊離AAの中で特長的なものは分岐鎖AAで3, 5%群で有意に低く, 60, 65%群でやヽ低値を示した. またThr, Serはタンパク含量の高くなるのに比例して低下した. これと関連して肝SDH活性も25%より急増し, タンパク過剰摂取分が肝臓で分解されていることを裏付けた. 脳中遊離AAも血漿同様3, 5%群で分岐鎖AAが有意に低く, 50%以上の群でも殆んど低い値であった. Ser.も血漿と同じ動きであったがThrは群別の差は認められなかった. またHisが3%群で最高となり25%群までは順次下降し, それ以上の群ではほヾ低い値で一定であった. 脳の総EAAはタンパク含量の高くなるのに反比例して低下する傾向が認められ, NEAAではさらにこの傾向が著しかった. 摂食量抑制因子については, これらの結果から今後検討を進め解明してゆきたい.
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