研究概要 |
昨年度に引き続き、ラットにおいて低タンパク食や高タンパク食投与時に見られる摂食抑制の因子を、脳・血漿中の遊離アミノ酸の動きや、肝臓中のSDH活性の変化より解明するために、本年度は食餌中のタンパク源にミルクカゼインを用い、飼料中のタンパク含量を5%から75%まで5%刻みとした15種の飼料にて、成長期のラットを1群5匹として10日間飼育した。この間毎日の摂食量、体重を計測し摂食状況を観察した。また飼育期間終了後の各群のラットの血漿・肝臓・脳中の遊離アミノ酸濃度を自動アミノ酸分析計にて測定し、肝臓のSDH活性は2,4-ジニトロフェニルヒドラジン法により測定した。また本年度はアルブミン群も含めて1部の群の動物について各組織中のTrp濃度を蛍光法にて定量した。結果の概要は20%食群を基準にすると5%、10%群及び60%以上の群で10日間の総食餌摂取量は有意に少なく、これらの各群において明らかに摂食抑制が認められた。体重増加量は摂食量に応じて15%以下の群と60%以上の群で有意に低い値であった。各組織中の遊離アミノ酸濃度については、血漿では総必須アミノ酸濃度は5、10%群と40%以上の各群で低い値となり総分枝鎖アミノ酸も同様であった。また、Met濃度は低タンパク、高タンパク何れにおいても低値となり摂食抑制との関連が示された。His濃度は低タンパク群にて有意に高値となった。脳中では総必須アミノ酸、総分枝鎖アミノ酸が高タンパク群において低くなる傾向があり、個々のアミノ酸でもHisにこの傾向が示された。Cys濃度は55%以上の群で有意に低い値となった。肝SDH活性は食餌タンパク含量の増加と共に著しく増大し、これに伴って各組織中のThr、Ser及びGlyは反対に低下し、タンパク過剰摂取分が肝臓で分解されていることを裏付けた。以上より摂食抑制因子として血漿・脳中のMet、His,Cys及び総分枝鎖アミノ酸の動きに注目した。
|