本研究は洗浄の基礎理論の一環である洗浄における機械エネルギーの役割を、遠心力洗浄により、力の方向性を考慮し、定量的に明らかにすることを目的として行い、2年間の研究により新たな知見を得ることができた。 昭和62年度 ポリスチレンラテックス粒子-ガラス基質の系について、超高速遠心機(最大回転数40000rpm)に、30°の角度型ロータを用い、装着するアダプターの基質ホルダーに傾斜をつけることにより、ロータを変えずに角度を0〜60°、180〜240°に変えて、遠心力による粒子除去を試みた。その結果、ロータ角度が小さいほど、水平分力の寄与が大となり、粒子除去率は増大した。また、水平分力を一定とし、垂直分力を変える条件で洗浄すると、垂直分力が小さいほど、粒子除去力は大きくなり、垂直分力が0の場合、すなわち、水平分力のみが働く場合に除去率が最大となった。この場合、ロータ角度0〜60°では、粒子付着面は遠心力方向にあるが、180〜240°では逆に回転軸方向を向くため、垂直分力により粒子は基質面におしつけられる。両者とも、上記の傾向を示したが、後者の除去率が15〜20%低かった。 昭和63年度 昭和62年度の結果を他の系について確認した。すなわち、基質をセルロース、アセテート、ポリエステルフィルムとし、前年度と同様の実験を行ったところ、ガラス基質と同様の傾向が認められ、水平分力と垂直分力の寄与を確認することができた。また、放送大学の研究費によって購入した画像解析システム(ビデオパターンアナライザー、VPA-750、KKレスカ)を用い、粒子数測定の基礎的事項を計測し、顕微鏡写真の引伸し画像による粒子数測定に利用するための詳細な検討を行った。その結果、本研究の除去率算定に行っている顕微鏡写真の粒子数の計測に応用することの可能性を確かめることができた。
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