革および毛皮の中のアルデヒド類の吸着機序 遊離型と結合型の相互関係 残留するアルデヒド類の抽出条件等の基礎的検討を行うと共に、革および毛皮中に残留する遊離アルデヒドを被服材料としての特性を損なうことなく除去する方法の指針を提案した。更に溶出アルデヒド量の測定方法を検討した。 (1)コラーゲンに対するアルデヒド類の吸着機序に関する公設:アルデヒド類の吸着条件による遊離および結合アルデヒド含有量の比、化学修飾コラーゲンへの吸着状況を比較することにより、コラーゲンに対するアルデヒド類の吸着はアミノ基、イミノ基の関与が大きいと認められた。 (2)革および毛皮中の滲出アルデヒド量:溶出アルデヒド量の測定は厚生省令第34号に示されている抽出温度40°C、1時間では不十分であり最低4時間の抽出が必要である。しかし、結合型と遊離型のアルデヒドは相互に平衡関係があり移行するため革および毛皮中より完全に滲出アルデヒドを除去することはできなかった。 (3)アルデヒドの除去:ホルムアルデヒド処理を施したコラーゲン繊維および毛を酸性亜硫酸ナトリウム、過酸化水素水、アンモニア水および尿素の2%溶液で処理した結果、酸性亜硫酸ナトリウムによる浸漬処理が遊離ホルムアルデヒドの除去に効果が認められた。 (4)再鞣剤および再鞣クロム・コラーゲン繊維中のアルデヒド含有量:再鞣剤中の全ホルムアルデヒドおよび溶出アルデヒドを測定した結果、カオチン性樹脂鞣剤およびアニオン性樹脂鞣剤に多量含まれていることが判った。これらで処理されたクロム・コラーゲン繊維には省令第34号で規定された75μg/g以上の溶出ホルムアルデヒド量を含むものがあった。この場合、再鞣処理後、中和処理前に酸性亜硫酸ナトリウムで浸漬処理することにより、溶出ホルムアデヒド量を75μg/g以下に減少させることができた。今後の課題として、含アルデヒド革および毛皮より気相によるアルデヒドの移行につき検討する。
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