研究概要 |
現代日本の住宅および住生活は, とくに1950年代の後半よりあとの生活技術・生活文化がはげしく変容した時期に, 再編成されて現代化してきている. なかでも食事炊事生活の手段体系とそのしくみは, 新旧の住生活の諸要素が併存されるもとで, おおきく変わってきており, その背後には, 食生活およびそれに関した日常的・非日常的な住宅内での生活の諸要素の変貌とが存在している. この研究は, こうした事実を総合的包括的にとらえて, (1)食事炊事生活の変容と住空間の体系の形成とのあいだにみられる連続性および変化を追求し, (2)その規則性と要因とを日常的・非日常的な住宅内生活における部屋などの使われかたの側面から解明することを目的にしている. すなわち近未来の食住の関係からみた住宅計画への基礎的な知見を得ようとするものである. 本年度はその準備段階である. そのため(1)食事炊事空間の物資的側面での構成とその変化, (2)住宅内における食事炊事方式などの生活的側面とその変化, (3)食生活の変化内容, をとらえる調査を, 関西地域・関東地域・熊本の都市部の住宅を対象におこなった(「現代住宅の住まい方と食生活に関する調査」, 昭和62年7-8月, 12月-63年1月に大阪工業大学・日本女子大学・熊本女子大学が共同して実施). またその一部をもとにして, 食事炊事空間の変化過程にあらわれた住宅内空間の現代化とその生活的意味をさぐった. それらは(1)食事炊事空間の構成からみた住宅平面の型系列とその変化, (2)日常的な住宅内生活と食事炊事生活との関係, (3)食事方式とその変化, (4)炊事方式とその変化, (5)日常的な食事の内容と食事炊事の物質的側面との関係, などである. また食事炊事にかんする生活型をみいだす試みをおこなっている. つづいてうえの諸要素の地域性を食事炊事に関する生活感および生活行動の把握をつうじて追求する.
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