研究期間にえられた成果を総括して報告する。研究は現在もつづいており、当初にたてた研究計画をこえて展開をつづけている。なお、この報告の内容は、1990年3月現在で印刷し公表した内容にかぎられている。しかしながら、その後にみいだした知見はおおいのである。継続して、それらを公表することにしている。 この研究は、現代日本の都市部および農村部の住居を対象にして、1950年代(おおよそ昭和30年代前)と80年代の前後の時期における住居空間のくみたてられかたおよびそこでの住まいかたをとりあげ、そこに内在するしくみとその変化を、とくに食事炊事などの家族生活に視点をおいて追求しようとするものである。生活文化・生活技術のはげしく変容した時期における近過去から現在にいたるまでの住居(住宅および住生活)の変化の動向の把握が、近未来の住宅計画にとって有効な視坐を計画基礎としての立場からあたえることが可能と、かんがえているからである。 これまで、(1)食事炊事などの家族生活におうじた空間(以下、食事炊事空間)の形態は、現代化する生活のもとで新旧の住生活の諸要素の結合関係をさぐって変化をつづけている、(2)旧来の食事炊事生活のしくみの再編成は、1960年代から70年代にかけてすすんでおり、80年代にあらわれた統合様式は、いちおうの社会化の過程をおえた段階にある、(3)現代日本の都市部の住居における食事炊事空間とその使われかたの統合様式には地域性が存在しており、それは、とくに食事の場と炊事の場との関係、家族生活と接客生活におうじた部屋のくみたてられかたと使われかた、などにいちじるしくあらわれている、ことなどがわかってきている。
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