研究概要 |
申請者らは、昨年度に引き続き、低水分系食品の焙焼中に生ずる種々の変化について研究を進めている。昭和62年度の研究結果から、クッキ焙焼中の香気成分の中で最も生成量の多い物質は2,3ーdihybroー3,5ーdihydroxyー6ーmethylー4Hー4ーpyranー4ーone(DDMP)であることが分った。この物質はクッキー原材料中で糖と卵、特に卵白が同時に加熱された場合に生成量が滝蔭糖と卵タンパク質の、いわゆる、アミノーカルボニル反応に由来するもの推測された。 そこで、今年度は更に糖とタンパク質を組合せ、反応させた結果、特にオボアルブミンとの場合が最も生成量が多くなった。次にフリーのアミノ酸と糖を反応させた結果、塩基性アミノ酸の中では特にアルギニン、ヒスチジン、中性アミノ酸の中ではプロリンの場合に高い生成量を示すことが確認された。一般的に、塩基性アミノ酸の中でリジンはアミノーカルボニル反応において反応性が高く、最も褐変し易いと報告されているが、今回のDDMP生成における顕著な反応性は確認できなかった。今回は余り言及しなかったが、DDMPの生成と褐変化とはやや加熱時間的に異なり、DDMPの生成がすでに減少傾向になった時、褐変化が生じてきた。褐変化に見られるリジンの反応性と、アルギニン、ヒスチジン、プロリンに認められるDDMP生成の反応性の高さとは異なるものと考えられる。 エームス・テストによる突然変異原試験においては、100μg/plateの高濃度においても活性を認めなかったことから、アミノーカルボニル反応の加熱生成物であるHMF、フルフラールに変異原性が認められても(文献)、一般的なクッキー焙焼条件での加熱生成量は余り問題にならないものと考えられる。
|