本研究の目的は、体育の授業過程における教師および児童の意識の変容を把握する方法を見いだそうとするものであった。過年度までの検討の結果、体育の授業における児童の意識の変容を把握する方法として、逐語記録法、カテゴリ-法、態度測定法、達成度調査法等が実施されており、これらは各研究目的と結びついて、より有効で簡便な方法が追究されている。また、これらは教師の行為の検討にも有効であることが確認されている。しかし、これらの中には児童自身にその変容の程度を聞く方法は含まれているが、教師自身により意識の変容をとらえる試みはほとんど無いことがわかった。しかも、この教師自身(すなわち授業者自身)からえられる資料に基づく研究の推進はより良い授業を目指す一助になることも確認された。したがって、本研究の目的は授業者の意識の簡便な把握方法の作成ともなる。この作成へ向けての研究授業の分析の結果得られた知見は、次の通りである。 1.抽出された授業者の意識の類型は、(1)予想(2)観察、発見(3)感心、とまどい、不安、失望、怒り(4)評価、確認、判断(5)反省、対策、修正、計画(6)願い、要望であった。2.これらの類型とこれに対応する行為の類型は授業者に固有のパタ-ンが見られる。このパタ-ンの蓄積は教授過程の研究の重要な資料となりうる。3.願い、要望は授業者の教育観を明らかにする手がかりとなる。4.願い、要望が出現するのは、児童の運動技能、態度、感受性などから想起され、それぞれの向上を期待してである。5.評価、確認、判断に授業者のいわゆるこどもを見る眼があらわれるのではあるまいか。評価、確認、判断には、学習者に関するもの以外として、授業者自身、学習内容、学習環境があげられる。
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