本年度の研究活動は前年度から継続していた作業と、研究成果の一応のまとめへ向けての検討ということであった。幸いなことに8月20日から文部省の在外研究員として2ケ月間欧米で研究することができた。日本に居ては充分収集できなかった文献資料にも直接あたることが出来、資料は予想以上のものが収集できた。従って今回の研究計画の中ですべてを調べることは出来ず、今後も継続して整理せねばならない。 研究成果のまとめとしてはZeidlerの学位論文をベ-スにして、収集された術語や用例を表にして示してみた。ドイツ体育の古典といわれる著書の英訳書、仏訳語版も入手したので、ドイツ体育の国際化の問題を、それぞれの訳語を通して検討することも試みた。5月におこなわれた日本体育学会体育史専門分科会の定例研究会で、これらの研究にもとづいて「グ-ツム-ツ研究の再検討」と題する研究を発表し、またヤ-ンの文献(1816)の英訳書(1828)を原典と対比させながら検討し、「〃A Treatise on Gymnasticks〃(1828)の研究」というテ-マで論文化し、日本体育学会体育史専門分科会編「体育史研究」第7号(1990年3月末日刊行予定)に登載されることになっている。 本研究を通して明らかになったことは、近代ドイツ体育が成立したといわれる18世紀末から19世紀にかけて、ドイツ語の体育専門用語が確立したということである。逆に用語のこの確立によってひとつの権威、ひとつの領域、つまり体育学が設定されはじめたとも云えよう。このような見解を示しつつ、これまでの作業にひと区切りを与え、研究成果報告書を作成した。これは、今年5月におこなわれる日本体育学会体育史専門分科会で公表される予定である。
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