研究概要 |
スポーツの競技においては, 優勝劣敗の原理が強く表面化するものであり, 勝敗がシリアスになればなるほど, また監督, コーチからの期待が大きいほど, スポーツ選手の心(自我)に強いストレスと受けとられる可能性が多分にある. そこで, 本研究は, スポーツの競技(競争的ストレス)がスポーツ選手の自我へどのような影響を与えているのかについて, 自己像が明確に確立されていない青年期に焦点をあて検討を試みることにした. 今年度は, 東海地区の中学生, 高校生, 大学生を対象に, 競技スポーツ活動実施者と非実施者の比較(横断的研究)に焦点をあて, 自我への影響についてTAG(東大式エゴグラム)により比較検討をおこなった. 今年度得られた主な結果は次のようである. 競技スポーツに積極的に参加している者は他の者に比較して, FC(自由な子供の自我状態)が高く, AC(順応した子供の自我状態)が低い傾向がみられた. 発達的にみると, 男女とも中学生, 高校生は大学生に比較してNP(養育的な親の自我状態), A(大人の自我状態)のエネルギーレベルが低い傾向がみられた. 特に, 女子は, 中学生, 高校生, 大学生ともに競技スポーツに積極的に参加している者は他の者に比較して総じて自我のエネルギーレベルは高い傾向を示した. 競技スポーツ活動実施者の競技成績からみると, 競技成績の高い者(東海大会以上の競技大会出場者)は, 競技成績の低い者に比較して, 女子はNP, Aが高く, 男子はFCが高く, ACが低い傾向がみられた. また, 男女ともに, 負けることが多い者は, 勝つことが多い者に比較してACが高い傾向がみられた. 今年度は, 上記のような点について検討をおこなったが, 今後は試合前後の自我状態の変化について, また競技スポーツの継続による自我状態の変化について検討を試みる予定である.
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