本年度は、試合前後の自我状態について、スポーツ実施者とそうでない者との自我状態についての継続的な観点について、の二点に焦点をあて検討をおこなった。得られた主な結果は、次のようであった。 1.試合前後の自我状態について:(1)卓球選手を対象にして、試合前後のエゴグラムパターンの比較をおこなった結果、試合前はFCよりACが高い傾向が見られた。このことは、試合前がかなりのストレス場面であることを示していると考えられると共に、選手の心理状態把握のため、エゴグラムが活用出来る可能性を示していると思われる。また、能力の低い者は、試合前にFC<ACという関係が見られた。しかし、試合後の勝敗によるエゴグラムパターンの分析では、顕著な差異は見い出されなかった。(2)サッカー選手を対象にして、試合前後のエゴグラムパターンの比較をおこなった結果、際立った傾向は見られなかった。このことは、集国スポーツであるため、個人への影響が緩和されるためではないかと考えられるが、技術的レベルの問題、試合の重要度の問題なども関連している可能性もあり、今後検討していく必要があると思われる。この点は、卓球選手についても関連深い要因でもある。(3)試合前後ではないが、水泳実習という一種のストレス場面が自我状態に影響する程度についても検討をおこなった。その結果、低能力群は実習直前になるとFCよりACが高くなる傾向を示し、泳力の低い者にとっては水泳実習がかなりの精神的ストレスと受け取られた可能性を示唆した。 2.スポーツ実施者とそうでない者との自我状態についての縦断的な観点について;本年度は、二年目にあたり、昨年度対象となった被験者について比較検討をおこなった。その結果、競技スポーツへの積極的参加の有無、発達的な面などのの観点からの比較検討においては、昨年と大きな差はみられなかった。
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